東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学研究系 自然環境学専攻




専攻長からのメッセージ

2014年4月1日

ご挨拶

自然環境学専攻長
福田健二


自然環境学の世界へようこそ。


「自然環境学」は、自然の営みを単に科学的に記述するだけの学問ではなく、人間と自然の持続可能な共生関係を構築するための「環境学」の一部門です。自然環境学は、主に理学と農学を基礎として、自然環境の構造と歴史とを解明し、その中で発展してきた生物の進化や生態系の機能を理解することによって、都市や農村の存立条件や資源の持続可能性を明らかにする分野です。いわば人間文明の持続性を考える上での「基礎(土台)」でもあり「制約条件」でもある自然環境、自然生態系を研究する分野です。


東日本大震災による巨大津波の被害と福島第一原発の事故は、技術によって自然を支配できるとみなしてきた20世紀型の文明のあり方に「想定外」という限界があることを、白日の下に晒しました。多くの尊い命が失われ、多くの人が故郷での平和な暮らしを奪われました。そして、その影響は今後数十年以上の長きにわたることが予測されています。


「環境問題」と言われる諸問題の中には、技術革新によって短期的に解決できる問題も多々ありますが、一方で、自然への深い理解なくしては解決が望めず、また文明のあり方そのものを問い直すことに至るような、より困難で根源的な問題も数多くあるのです。


私たちは、地球レベルの気候変動や地形形成、大洋レベルの海洋環境変動のようなグローバルスケールの問題から、都市の縮退や農村集落の持続、里山バイオマス資源の利用、種々の漁業資源の管理といった地方スケールの問題、特定の希少植物種の生育地や干潟の保全といった地域スケールの問題まで、自然環境を巡る具体的な問題をそれぞれの研究テーマにしつつ、自然と人間社会との持続可能な共生関係を再構築するための新たなビジョンを提示するような研究を行いたいと考えています。


既存の理学や農学、文科系、理科系といった枠にとらわれることなく、当専攻では自然環境に対する幅広い知識を講義や実習、演習によって学び、修士論文、博士論文で特定の専門分野を深く追求することによって、環境問題の解決を目指す専門的な人材を育成しています。そのためのカリキュラムとして、自然環境学専攻の修士1年次には「コア科目群」をはじめとする幅広い講義と実験実習科目が用意されており、幅広い分野の基礎知識と自然理解の技術を習得できます。また、陸域、海洋の各コースの全教員・全学生が一堂に会して毎週行う「コースゼミ」や、分野横断的な野外実習に参加することで、研究室の枠を超えた広い視野と深い友人関係が得られることでしょう。


理想に燃えた多くの若者が自然環境学専攻で学び、研究者として、あるいは実社会の様々な分野でリーダーとなって、自然と調和した新たな文明の創造を目指して活躍されることを期待しています。